15.顧客価値の複雑性
この記事は、日本経済新聞社から出版している“MOT[技術経営]入門(延岡健太郎著)”を読んで、自分なりに整理し、意見を述べたものです。
顧客ニーズが頭打ちしてしまうと、価格競争になりがちです。新商品を市場投入し、顧客ニーズが商品機能を上回っている最初のうちは、競合他社に負けないよう機能アップ品をどんどん投入します。
例えば、デジカメなどが良い例です。初期の頃、画素数が数十万画素の時はフィルム写真より劣っており、ユーザーはもっと解像度が良いデジカメを期待していました。顧客ニーズに応えるために高画質のデジカメを開発し発売されると、私はよく買い替えたものでした。
しかし、商品機能が顧客ニーズを上回ってしまうと、その機能にお金を払ってまで手に入れようとせず、自分の満足できる機能で安い商品を手に入れようとします。これが顧客ニーズの頭打ちですね。
私は、1000万画素以上になるとL版ぐらいにプリントアウトしても画素数差を感じなくなりました。そうなると、わざわざ高い4000万画素のデジカメを買わなくても、1000万画素の安いデジカメでよいと思ってしまいました。もっと極端に言うと、スマホのデジカメ機能で十分であれば、デジカメを買う必要もなくなります。
では、価格競争に陥らないためにはどのような方策があるのでしょうか。
簡単・明確な機能軸(デジカメでいうと、画素数のような数値で表されるもの)ではなく、もっと抽象的・感覚的な複雑な顧客価値を創出することです。
デジカメの例でいうと、持ち運びしやすい薄型・軽量タイプ、女性ターゲット向けのかわいいデザイン、防水・低温対応、自撮りが簡単にできるデジカメなどです。これらのタイプは、技術的は既存技術で商品化できるものばかりです。すなわち、新たな価値軸を見つけて、それに特化した商品を創造すれば、コモディティ化を防ぎ、価格競争に陥らないで済みます。
しかし、上記のようなやり方で、顧客ニーズを開拓しても、魅力ある領域には競合他社も参入してきますので、中長期的には価格競争になってしまいます。潜在ニーズをキャッチアップして、競合他社より先行して商品開発し続けるしかありません。そのためには、持続的な競争優位を保てる組織能力が結局は必要になってきます。これは、以前書いたブログに何度も登場してましたね。
今までの機能的な顧客ではなく、その商品に対して特別な想いを持ち、それに対して対価を払うことがあります。これを本書では「意味的価値」と述べています。もう少しわかりやすく言うと、マニア性・芸術性などのこだわり価値とステイタス性・ファッション性などの自己表現価値があります。具体的には、ブランド品は高くても買いますよね。いや、ステイタスを求めて高いものをわざと買いますよね。
また、デザイン性がよいダイソンの掃除機などもそうですよね。他にも、一生に何度も買えないものはこだわって買いますよね。例えば、マイホームです。こういった物には意味的価値があります。
意味的価値を持った商品は価格競争になりにくいです。逆にパソコンなどのモジュール製品は意味的価値を持たせることが難しく、価格競争になりがちですね。
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