20.技術経営の実践
この記事は、日本経済新聞社から出版している“MOT[技術経営]入門(延岡健太郎著)”を読んで、自分なりに整理し、意見を述べたものです。
とうとう最終章まで読み進めてきました。ここでは、本書で強く述べられていることを中心に書きたいと思います。
技術経営は本質的に不確実性の高い分野です。特に、技術の不確実性、顧客ニーズの不確実性、競争環境の不確実性が極めて高いです。加えて、環境変化がスピードアップしたことによって、10年後の事業構造や持つべき技術を正確に予測することはできません。
では、技術経営において持続的な競争力を持つためには何が必要でしょうか?
本書では、簡単に真似のされない、本物の骨太の強みを構築すること、と述べています。そして、本当に厳しい環境の中で、頼りにできるのは長期的に鍛え上げた組織能力だけである、と述べています。
長年かけて積み上げてきた組織能力は、他社は容易に真似できません。真似をしようとすると、その年月だけかかってしまいます。他社に追いつかれる前に更に組織能力を向上させることで、追いつかれないようにしてきます。本書では、「ブレない技術経営」ということで、コア技術、組織プロセス、事業システムの構築が重要である、と述べています。
しかし、市場環境・競争環境の変化のスピードが速まっていく今日においては、長期的に構えて行動していては変化の流れに置き去りにされることも考えられます。よって、変化に対応できる柔軟性や機動性も大事であるとも考えられます。
整理しますと、「ブレない技術経営」と「変化に対応できる柔軟性や機動性」はトレードオフの関係になります。これからの技術経営は、どちらが正解なのでしょうか?
私は、本書に書いてある通り、「ブレない技術経営」が正解だと思います。たしかに、「変化に対応できる柔軟性や機動性」も重要です。時代の流れや市場動向からヒット商品を市場投入することも必要です。しかし、それによって一時的に業績が良くなったとしても、それに胡坐をかいて継続的な組織能力向上を怠ってしまうと、他社に追いつかれてしまいます。高い業績をあげているときこそ、自社の強みと弱みを冷静に評価して、自社の強みを継続的に強化し続けることが重要であると、本書では強く述べています。
まとめますと、日々の戦術レベルでは市場や顧客への柔軟な対応が不可欠で、企業としての長期的な戦略レベルでは、柔軟な対応に右往左往するのではなく、企業としての骨太の強みを生かした「ブレない技術経営」が必要となります。
私は日頃中小企業の経営者にお会いする機会が多くあります。長期的な戦略レベルをしっかり考えている経営者は意外に少なく、ご支援する機会も多いです。そして、しっかり考えている経営者がいる企業は確かに、長い目で見ると業績が上昇傾向にあります。足元の経営で精一杯で長期戦略が考えられない、この先どうなるかわからないのに長期のことまで考える必要がない、とお考えの経営者はたくさんいます。しかし、不確実性の高い技術経営だからこそ、自社の強み・弱みを明確にし、長期的な視点をもって事業ドメインを決めていく必要があると考えます。
技術経営をしっかりと実践したい企業の方は、このブログを一読してもらうとおおよそ理解できると思います。さらに深堀したい方は本書でも良いし、他の参考書で更に勉強されることをお奨めします。
これで、技術経営についてのブログは終了です。お読みくださった皆様、ありがとうございました。
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