13.フロント・ローディング活動
この記事は、日本経済新聞社から出版している“MOT[技術経営]入門(延岡健太郎著)”を読んで、自分なりに整理し、意見を述べたものです。
製品開発プロセスにおけるフロント・ローディングとは、生産技術部、製造技術部、品質管理部、製造部などの後工程を製品開発段階から前倒しで参画してもらい、課題の早期潰しこみをし、結果、円滑な製品立上げを行う活動のことです。
この活動はコンカレント・エンジニアリングと密接に結びついていて、各工程が同時並行的に進めるということは、開発段階から後工程が検討を始めるということです。よって、必然的に後工程は開発初期段階から情報を入手し検討することを要求されますので、それがフロント・ローディング活動となります。
この活動のメリットは、課題の早期潰しこみにより開発期間の短縮、品質向上につながります。開発終盤に不具合を発見しやり直し作業が発生すると、挽回するために多大な開発工数が発生してしまいます。また、後工程が動き出した後に不具合が発生した場合などは、商品の市場投入の大日程にまで影響を及ぼしてしまいます。また、仕事の担当者間も険悪な状態となり、組織能力も低下してしまいます。そうならないためにも、フロント・ローディング活動は開発業務の有効な手段の一つと考えます。
逆にデメリットとしては、開発初期段階での製品設計者の負荷が大きくなることです。後工程の意見を吸い上げ、設計に反映することは非常に重要です。しかし、その工数は確実に増えます。また、部門間のコミュニケーションがうまくいってないと、開発設計者へあれもこれも後工程から要望がきて、忙殺されることもあるかもしれません。後工程担当者は、自工程で円滑に業務を進めたいがために、前工程へいろいろ注文を出します。部門間でのコミュニケーションが悪いと、できる・できないの口論になったりすることもあります。
では、どうしたらフロント・ローディング活動を良好に進めることができるのでしょうか。それは、お互いにWIN-WINの関係になることが重要です。
前工程である開発設計部門は、①早期に課題を潰しこめて、手離れの良い開発業務を行えること、②後工程の考え方を学んで、設計能力を向上し、次回の設計に活かせること、というメリットを獲得できることが大切だと考えます。
後工程である生産技術部門などは、①前工程から流れてくる図面などが実行可能性の高い図面に仕上がっていること、②製造しやすい設計仕様となっていること、というメリットを獲得できることが大切だと考えます。
フロント・ローディング活動は、すり合わせ型の業務スタイルです。すり合わせは人が行います。組織プロセスとしてフロント・ローディング活動を体制化し、目的・目標を共有し、関係者が同じ方向を向いて業務推進することが重要です。それに加えて、実務レベルではコミュニケーション力が重要となってきます。お互いの専門能力を認め合い、プロジェクトを成功させていこうという共通認識で、仕事を行うことが非常に大切ですね。
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