7.コア技術戦略 – guts-consultant
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7.コア技術戦略

この記事は、日本経済新聞社から出版している“MOT[技術経営]入門(延岡健太郎著)”を読んで、自分なりに整理し、意見を述べたものです。

本書では、技術による強みを持続するための組織能力を構築し活用する技術戦略を「コア技術戦略」と呼んでいます。そして、コア技術戦略の組織能力には2つの要素があると述べています。1つ目が「真似をされないコア技術」、2つ目が「コア技術を日々の技術・商品開発を通して鍛える組織能力」です。ある時点で技術力に優位性が認められ、それを競合企業以上の速さで鍛える仕組みがあれば、競合企業は追いつけません。よって、その企業は持続的に競争優位に立てることになります。

しかし、技術力を構築する期間と移り変わる市場・顧客ニーズへの対応とは時間的整合性を取ることが難しくなってきています。競合企業から真似されないコア技術を構築するためには、長い時間がかかります。短い時間で構築できるものは簡単に真似されます。長い時間かけて構築するからこそ、簡単に他社は真似できないのです。しかし、市場や顧客ニーズの変化速度は速くなる一方です。それに対応するためには長期間かけてコア技術を構築することは、リスクが高いです。将来的にそのコア技術を使った商品を市場導入できればよいですが、他社のコア技術が市場獲得してしまったら、サンクコストとなってしまいます。よって、コア技術の構築と市場・顧客ニーズ対応とはトレードオフの関係があります。

では、どのようにしてこのトレードオフを解消して獲得価値を目指したらよいのでしょうか。本書では、コア技術をベースに商品・市場を分散させると述べています。そうすることによって、①リスクを分散できる、②多彩な商品へコア技術を展開することによって、コア技術を鍛える(成長させる)ことができる、③コア技術を転用できる市場が広がる、と述べています。

私の経験に当てはめてみます。私が所属していた部署では電磁クラッチ技術を使った製品を開発していました。最初はA社向けに商品化しました。次にコア技術を転用しB社仕様に改良し商品化しました。同様に複数の他社向けに改良して商品化しました。それを繰り返していると、市場シェアが大きくなり、他社に対して規模の経済性も働きQ(品質)、C(コスト)、D(納期)において優位性を確保できました。

逆に、商品・市場をベースにしてコア技術を分散させる戦略も行いましたが、なかなかうまく進まなかった経験もしました。それは、自動車の電動化に向けて、電磁クラッチ技術からモーター駆動技術への転換です。新しいコア技術を獲得することは短時間ではやはり無理でした。時間がたつとモーター駆動方式を既に持っている他社が先行してしまい、市場シェアをだんだんと奪われてしまいました。

電動化による商品コンセプトの不連続変化が発生してしまうと、コア技術を活用できなくなることもあります。潜在事象も含めた市場ニーズをキャッチアップし、自社の商品群のポートフォリオを作成します。そして、製品ライフサイクルと照らし合わせながら、新商品開発を実施していくことが重要となります。

 

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