17.事業システムの分業
この記事は、日本経済新聞社から出版している“MOT[技術経営]入門(延岡健太郎著)”を読んで、自分なりに整理し、意見を述べたものです。
企業が商品を市場に投入するまでの一連の業務で、開発・設計・製造などすべて自社で行う自前主義から、その分野が得意な企業や専門企業に業務委託するオープンシステムのやり方が主流になってきています。いわゆる分業です。分業の種類には「水平分業」と「垂直分業」があります。これらは本書では以下のように定義しております。
【水平分業】
商品を構成する部品、およびそれらを組み合わせた最終商品といった製品構造における分業。
【垂直分業】
設計や製造などの機能に関する分業。
参考に本書では、部品などの製品構造上の統合が「垂直統合」で、設計や製造などの機能別の統合を「水平統合」と定義しています。水平と垂直が分業と統合で逆に使われているので注意が必要です。
「水平分業」⇔「垂直統合」 、 「垂直分業」⇔「水平統合」
私は水平統合という言葉は、あまり使ったことがありませんので、〇〇統合のことは一旦おいといて、水平分業と垂直分業の定義をしっかりと理解し使い分けて活用すると良いでしょう。
さて、水平分業の具体例としてパソコンがあります。CPUがインテル、OSがマイクロソフト、メモリーはCFD、SSDはサンディスク、アッセンブリーはデルなど、構成部品を外注手配して自社でアッセンブリーするような形態です。
垂直分業の具体例は、ファブレス企業、OEM生産、EMS企業などですね。アップルはiPhoneの開発・設計は行いますが、製造は台湾のメーカー(工場は中国)ですね。また、設計をデザイン会社へ委託して、その設計を自社で製造するメーカーもありますね。
では、なぜ分業をするのでしょうか?それは専門企業の強みを享受してもらうことだと考えます。専門企業の強みは、主に2つあります。
①技術の集中による優位性
専門領域を特化することによって、コア技術戦略が明確になり組織能力と技術力を明確に強化できる体制ができます。また、たくさんの顧客と取引をすることによって、その分野の情報が集中的に入手でき、それらの情報を精査・ミックスすることで、新たな価値創造として顧客へ提案できます。
②生産量の集中によるスケールメリット
専門メーカーとして、たくさんの企業から仕事を受注することによって、標準化された製品であれば規模の経済性効果、それぞれ違う仕様であっても範囲の経済性効果により、コスト効果が出てきます。また、長年製造することによる経験効果も出てきます。
このように、専門メーカーとしてQCDに優位性を持てば、完成品メーカーとしては内製するより外部委託する方がメリットが出てきます。
ただし、外注先の立場の方が強くなってしまうと、品質面、コスト面、納期面でコントロールが難しくなります。そうならないためにも、外注する部品や工程においても自社で手の内化することをお勧めします。トヨタ自動車は手の内化が非常に上手な会社で、一度内製し、技術を蓄積した後に外注化することによって、品質面やコスト面に対して、外注先と対等又は優位性をもって交渉できる体制になっています。
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